ご主人様がくれたクリスマス


 天蓋付きの巨大なベッドが二組に、最高級のソファが四台。
 それらを収めてなお余るだだっ広い部屋は、どこを見ても豪奢なばかりの調度品で彩られていた。
 希少種である火鼠の毛皮で編まれた絨毯に、貴重なアーティファクである魔力冷蔵庫まで備付けてある。
 天井に吊るされたシャンデリアは当代一との誉れも高い職人がガラス細工を手がけ、
 達人クラスの魔術師がエンチャントを施した国宝級の逸品だ。

 しかし、その絢爛な魔力光によって皓々と照らされた室内はただひたすらに悪趣味で、
 上流階級の者が纏うべき気品や優雅さはまるで見当たらない。

 とにかく値の張る物を金に飽かせて掻き集めただけ。
 肥え太った虚栄心の醜悪さを具現化したような、成金趣味丸出しの部屋。

 それが、ご主人様からあてがわれた『リアの部屋』だった。

 もっとも、その広い空間のすべてがリアに与えられたわけではない。
 彼女が自由にしていいのは、入口のドアからちょうど反対側の壁際に置かれた小さなケージ。
 自由など欠片もありはしない、狭い狭い檻の中だけだった。


 手足をギュッと丸め、小さな体をさらに小さくして横たわるリア。
 ケージの幅は少女の細い肩よりわずかに広い程度で、向きを変えることはもちろん、寝返りを打つことも出来なかった。
 奥行きは頭の天辺から太腿の真ん中あたりまでの長さしかなく、常に足を曲げた窮屈な姿勢を強いられている。
 高さに至っては、四つん這いで身を起こそうとするとすぐに背中が当たってしまうほどしかない。
 それは、伏せをする犬のように蹲ったリアを、ようやく囲えるサイズにオーダーメイドされたケージだった。

「ぁ……っ……」

 半開きの唇から、湿った吐息が零れる。
 かつてゴメスとならず者たちに輪姦された記憶はもう、心と体のどちらにも残っていない。
 そんな一時の情事など完全に上書きされ、塗り潰されるほどに、ご主人様は可愛がってくださったからだ。

 寝ても覚めても、食事のときも排泄のときも、一秒も途切れることなく愛玩動物として過ごす日々。
 今も剥き出しの股間には二本の張り型が突き立ち、施された呪力によって小刻みに震えている。
 ご主人様である男のペニスを型取りし、魔術によって温度までをも再現したものだ。
 直接の寵愛を賜る時以外、四六時中咥え込まされているそれらの性玩具によって、リアの双穴はすっかり彼の形にされていた。

 形だけではない。
 ぐっぽりと拡げられ、ちりちりと炙られる幼裂から、清水の湧くように愛蜜が滴る。
 少女の花弁は外貌の無垢なるをそのままに、内側の粘膜を爛れるほど淫らに熟れさせていた。
 同様に躾けられた菊肛もまた、すっかりとほぐれきって、埋めこまれた擬似男根を甘えるように締めつけている。

 執拗な反復学習によって刻みつけられた、唯一絶対なる牡の存在。
 無理やりに開花させられた牝本能を、ご主人様に対して至福の悦びを覚えるよう捻じ曲げて育まれたのだ。

 歪な成熟を強いられたのは、双穴だけではない。
 真紅の首輪だけを身につけた少女の幼い裸身は、煙るように薫り立つほどの凄艶な色気を帯びていた。

 ほっそりとした首筋。触れれば折れてしまいそうな鎖骨。薄く浮かんだ肋骨の危うさ。
 儚げなうなじから優艶に磨かれた背中、緩やかにくびれゆく腰から慎ましく盛りあがった臀丘へと続くライン。
 それはまるで、蕾が花開く寸前の一瞬を切り取り、繊細な筆致で描かれた一枚の絵画のようだ。

 透けてしまいそうに白い肌は蕩ける砂糖菓子のような手触りで、過剰なまでの媚びを含んで眩く輝いている。
 その下に、クロウのアサシンとして鍛え上げ、秘めていたしなやかな筋肉は、ない。

 大事に大事に飼われ、ひたすらに可愛がられるペットに、そんなものは要らない。
 絶対の庇護と無限の寵愛を与えてくださる、素敵な素敵なご主人様がいるのだから。

「ぁ、ぅ……み、ず……」

 半ばまどろみ、半ば失神して、延々と続く淫夢のような現から逃避していたリアが、喉の渇きに目を覚ました。
 淫熱に浮かされ朦朧としたまま、ずずっと頭だけを這わせて水を求める。
 水は少し首を傾げれば届く場所に、いつでも好きなだけ飲めるようになっていた。

 正面を覆う鉄格子の左端から、斜めに突き出た給水器。
 それは、両孔を塞いでいるものと同じ、主人のペニスを型取りしたディルドーであった。

「……あむっ」

 それを、躊躇うことなく頬張る。

「んっ、ちゅっ、ぺろ……」

 そして、本物のご主人様にそうするように、擬似男根へとフェラチオ奉仕を捧げていく。
 たくましい幹を唇でやわやわと揉みこみつつ、立派なエラを這ったカリ首へと舌を這わせる。
 首を振り、前後に擦り立てながら、窄めた舌先で裏筋をつつく。

「んっ、んちゅ、んぽっ、ちゅぱっ……! こくっ、こくっ……」

 やがて鈴口のところから染み出してきた液体を、リアは夢中で嚥下した。
 コクコクと喉を鳴らしながら、少女はなおも熱心に張り型を舐めしゃぶる。

 男の生理を模した、これもまた特別製の淫具であった。
 生命維持に絶対必要な水分を盾にして、調教対象に口唇愛撫の熟練を強いるのだ。
 悪趣味、ここに極まれりである。

「んぽっ、んちゅんちゅ! ゴクッ、ゴクッ……じゅぽっ、じゅぷっ!」

 生気を失い、蝋のようだった頬が、次第に赤みを帯びてくる。
『愛しいご主人様の素敵なおちんぽ型給水器』から溢れてくるのは、ただの水ではない。
 ここまでくれば、いっそ感心するほどに徹底されていた。

 味も臭いも口あたりも、『愛しいご主人様の美味しいおちんぽ汁』そのままに調整された滋養液である。
 ちなみに、それだけで過不足ない栄養を摂れるため、まともな食事は一切与えられていない。
 つまり、この屋敷に買われ、この駕籠で飼われてから、リアは主人の精液以外の味を口にしたことがないのだ。
 そして恐らくは、これから先もないだろう。

「んちゅっ……コクコク……んっ、んむっ、ちゅぱ……こくっ……!」

 一心不乱に、少女は擬似男根を食み舐り、溢れでる擬似精液を啜り飲む。
 最初のうちは、気が狂いそうなほど嫌がり、随分と抵抗したのが嘘のようだ。
 まずは力ずくで、次は激しい折檻で追い込まれて、やがては渇きに負けて、嫌々ながら口にした。
 そうして徐々に馴らされ、何度も何度も「美味しい」と言わされながら飲むうちに、リアの味覚と常識は変質していった。

 今では、本当に心の底から、ほっぺたが落ちそうなほど美味しいと思う。

――天上の甘露も、虹色蜂のロイヤルゼリーも、きっとご主人様のおちんぽ汁より美味しいはずはない。

 全く本気の本気で、それが当然の真理のように、リアはそう思うようになっていた。

 もっともっとたくさん味わいたくて、哀れな少女は懸命に張り型へとむしゃぶりつく。
 すっかり器用になった舌を尖らせ鈴口に差し込んでは、ぐるぐると回転させて棹全体へと這わせる。
 喉奥までずっぽりと咥えこめば、頬をベッコリとへこませて強烈な吸引を加えた。

 そのときである。ガチャリとドアを開け、彼女の神様が入ってきたのは。
 駕籠の中の少女が信奉する唯一絶対の神様は、小太りな中年男の姿をしていた。

「んんっ!? ぷはっ……ああっ、ご主人様ぁん……♪」

 その姿を見た瞬間、リアは弾かれたように張り型から口を離し、彼の方へと向き直った。
 千切れんばかりに振られる尻尾が見えるほどに喜び、大好きなご主人様を歓迎する。
 ケージの存在も忘れて少しでも近づこうとし、顔をぶつけてしまうほどのはしゃぎぶりだ。

「よしよし。食事中だったのだろう? いいから、先に好きなだけ食べてしまいなさい」
「はいっ! ちゅっ、ちゅっ♪ ん〜〜っ、ちゅ♪ ぺろっ、ぺろぺろ……コクコク……美味しいれふぅ♪」

 先ほどのがっつきようは鳴りを潜め、甘える子猫のような愛嬌のある仕草でディルドーをしゃぶる。
 大好きな人に、ちょっとでも可愛いところを見せたいという、健気な媚びであった。

 お気に入りのペットの、そんな行き届いた仕込み具合。
 そして、単純に水を飲む姿の小動物的な愛らしさに、男は頬を緩ませ、股間の一物を硬くする。

「ぷはぁっ……♪ ご主人様ぁ……リア、お腹いっぱいになりましたぁ……」

 食事を終えたリアは、くぅんくぅんと甘く鼻を鳴らし、しとどに蜜を噴き零して、期待に潤んだ上目遣い。
 ケージを開けてやれば、スルスルと器用に這い出てきて、ちょこんと行儀よくお座りする。

「ふふふ。メリークリスマス、リア」
「ふぇっ? クリ……スマス?」
「そうだ。今日はクリスマスだよ、リア」

 昼も夜もなく、抱かれては眠るだけの生活である。日付の感覚なんて、とうの昔に失せていた。

「だから、ね。いつもいい子のリアに、プレゼントがあるんだよ」
「プレゼント……! あっ、あぁっ……ご主人様から、プレゼントぉ……」

 プシャ……ピュ、プシュ……ピュピュッ、プシャァァァァ……!

 リアの整った顔が歓喜に蕩けきり、次の瞬間、蒸れきった股間から黄色い飛沫が迸っていた。

「あっ、ダメっ、ああっ……!? ごめんなさいご主人様、ごめんなさっ……!」
「ハハハ。構わないよ。そのまましてしまいなさい。おしっこを漏らすほど喜んでくれるなんて、私も嬉しいよ」
「ああっ、ありがとうございます、ご主人様ぁんっ……♪」

 粗相をした自分を寛大に許してくれる主人の優しさ、大きさに、少女はまた忙しなく股座をぬかるませる。
 そんな愛くるしいペットの眼前に、男は背中に隠し持っていたプレゼントを掲げた。

「えっと……くび、わ?」(ああっ、新しい首輪だ!)

 絶え間ない肉悦に茹でられたリアの視界には常に桃色の靄がかかり、薄っすらとぼやけている。
 遠近感さえ朧なその目では、環状の物体であることと掌ぐらいのサイズであることしかわからなかった。
 だから、新しい首輪、新しいご主人様との絆の証だと判断して、また嬉ションするところであったのだが――。

「えっ?」
「ふふふふ。私からのクリスマスプレゼント。しっかりと受け取ってくれよ、リア」

 だらしなくやに下がった笑みを浮かべて、男はそれをリアの首ではなく――己の股間へと持っていった。



 天蓋付きのベッドで、仰向けに寝そべった中年男。
 その広げた足の間に蹲り、股間へ顔を埋めて、今度は本物のご主人様へと舌を這わせるリア。

 まずは唇や手指を使い、時には胸肌を擦りつけての奉仕から。
 ご主人様の一物が十分に滾ったところで、挿入をせがむおねだりフェラ。
 様々に体位を変えながらまぐわい、男が射精すればそのたび感謝のお掃除フェラ。
 それを、主人が満足するまで繰り返すというのが、いつものパターンだった。

 しかし、この日は違った。
 いつも最初の一発は膣内に注ぎ込むのに、男は開始早々の口唇奉仕であっさりと精を放ったのである。
 その後も二発、三発と口で達し、リアが今日はアソコを使ってもらえないのではと心配したほどだ。

 だが、男の勃起は少しも萎える気配を見せなかった。
 普段なら、一度の射精につき複数の体位でリアの具合を楽しむのに、今日は逆に、一つの体位で何度も達する。
 それでもなお、主人の雄は寸毫の陰りも無く猛り続け、何十発という精を放ちながら幼い肢体を貪った。

 正常位から抱え上げられての対面座位。そこから寝転んだ男の太鼓腹に乗せ上げられての騎乗位。
 ぺちぺちと尻を叩いて促され、反転しての背面騎乗位に、前へと倒れこんだところを四つん這いにされてドッグスタイル。
 そこからさらに横倒しにされ、側臥位に移行したところで、リアはついに失神してしまった。
 なおこの時点で、男はすでに三十発以上を撃ち放っている。

 未だ褪せることのない精気で満ち溢れた中年男。
 その股間の肉棹の根元には、プレゼントだと掲げたあの輪っかが嵌められている。
 それは、装着した者を底無しの絶倫にするマジックアイテムだった。
 つまり、リアへのクリスマスプレゼントとは、絶倫化した彼自身であったのだが……。

「あぁ、いやっ、ごめんなさっ、ごめんなさィッ……! もうお許し下さ、イヒィ!?」

 失神しては突き起こされ、覚醒しては突き落とされる。
 悠に三桁を数えた射精はそれに倍する雌絶頂を強いて、罪無き少女を無限地獄へと送り込む。
 これではもはや、拷問であった。一歩間違えれば処刑にすらなりかねない。
 もっとも哀れな少女にとっては、むしろその方が幸せであっただろう。
 しかし、その点、男は抜かりなく、いよいよとなればあの精液味の滋養液を飲ませて、リアの体力を保たせた。


「ぃっ……! ぁ……、ぉっ……! っ……」


 常軌を逸した交合が、丸一昼夜を越える頃。
 リアの声はとうに嗄れ果て、時おり隙間風のような吐息を噴き零すだけとなっていた。
 未だ疲れを見せぬ男も凄まじいが、それに輪をかけて凄まじいのがベッドの状態である。

 放ちに放たれた膨大な精液にリアの漏らした小水が混じり、黄ばんだクリームシチューを煮込んでいるような有様であった。
 自身の白濁液で出来た巨大な水溜りの中では、さすがの絶倫男も興が乗らない。

 これで、ようやく終わる――はずもなく。

 こんなときのために、二組揃えたベッドである。
 そう。『リアの部屋』というのはつまり、『彼がリアを抱くための』部屋ということなのだ。

 男はメイドたちを呼びこみ掃除を命じると、失神したリアを抱えてベッドを移ろうとする。


――その直前。

 全身漏れなくぶっかけられた精液がパリパリに固まり、
 放心した無表情と相まって蝋人形のようだったリアが、にっこりと笑った。


「あはは。ホワイトクリスマスだぁ……」

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