狂いゆく世界で 〜オードの兄妹〜


禁忌受胎


数刻後――。

もう何発目になるかもわからない兄の精液が、妹の子壺へと注ぎ込まれる。

「ああっ、でてる……また……でてるよぉ……」
「すまない、ラクチェぇ……うっ、ううっ……すまないっ、すまないっ……」

その瞬間――。

「……え?」

ラクチェの下腹部に、鮮やかなオードの聖痕が浮かび上がった。

「なに……これ?」

呆けた声で、ラクチェは呟く。

聖痕が、焼けるように熱い。
正確には、聖痕が刻まれた肌と、その奥にある器官が。

子宮が、熱い。

「へへへっ、ようやくか。それはなぁ……」

愉快で堪らないといった様子で、男はもったいぶる。

(言わないでっ……! 聞きたくないっ、知りたくないっ……!)

もう、わかっていた。
はじめから、わかっている。

命を育む性としての本能が、理性にとっての絶望を、嫌になるほど告げていた。



「“ お め で た ” だよ――英雄様」



断頭台の刃のように落とされた、その言葉に。

「あっ、ああっ、あぁぁっ……あぁあぁぁああぁぁぁあぁぁぁっっっ!!」

兄の種で、禁忌の子を孕んだ少女は、張り裂けるような慟哭を奮わせた。

「そんなっ……そんなっ……ラクチェ、ああっ、ラクチェっ……!」

妹の処女を奪い、孕ませてしまった少年は、世界から色が抜け落ちていくような喪失感に包まれ、力無い嘆きを零し続ける。

双子の兄妹に強いられた近親相姦という禁忌。
人の所業とは思えぬ非道を、しかし、かつて彼らが救おうとした人々は肯定していた。
世界はもう、そこまで壊れていた。

狂いゆく世界の片隅で。ただ一人、男だけが。
地獄の底から沸きあがるような嗤い声を上げていた。

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