御堂茜、女肉華道 〜退魔師生花化粧〜 壱


二日と間を空けず発生する妖魔の襲撃。体調不良を訴える生徒の急増。
不吉な偶然の重なりに、茜はようやく学園の気脈に混じる負の力に気づいた。

初動の遅れを取り戻さんと懸命な調査の結果、目星を付けたのは――華道部。
元々週二日程度だった活動を、異常の起こり始める直前から、ほぼ毎日行っていたのだ。

それだけである。ただの偶然かもしれない。しかし、他に有力な手がかりも無い。
もはや一刻の猶予も無い事態に、茜は危険を承知で潜入捜査の敢行を決断した。




そして今、それは見事に裏目っていた。

赤い日差しの差し込む、和の心に満ちた畳敷きの一室。
虹源学園華道部の部室である。

上座に鎮座した華道部長は、落ち着いた柄の着物がよく似合う、いかにもあつらえたような大和撫子だった。
お手本のように見事な正座をして、穏やかな笑みを浮かべている。

その向かいには、やはり着物に身を包んだ男女、あわせて十人余りの華道部員たち。
同じく正座をして、膝の上に両手を添えてピンと背筋を伸ばし、静かに部長の言を待っていた。

清冽で荘厳なその光景。
しかし、そんな両者の間、微笑む部長のすぐ目の前に。


そんな神聖ささえ湛えた光景を台無しにする、珍妙なオブジェが置かれていた。



御堂茜である。




「……っ、んっ……ふっ、んふっ……んっ! んひっ! ふむぅぅぅ……!!」

静寂を湛えた茶室に、猿轡を噛まされた茜の、くぐもった呻き声だけが響いていた。

茜は薄紅色の襦袢を羽織り、真紅の褌を締めて、畳から生えた触手に捕らわれている。
頭と肩を支点に体を二つ折りにされた、いわゆる『まんぐり返し』の体勢である。
元より短い襦袢の裾はめくれ返って、赤い股帯の食い込んだ股間と桃のような双臀をご開帳していた。

捜査のために体験入部を申し出て、見学していた最中に意識を失い、気づいたときにはこの有様である。
術は封じられ、携行していた退魔具の類も根こそぎ奪われていた。

腕は足の方に向けて伸ばされ、足は頭上へと畳まれて、ガッチリと触手に縫いとめられている。
細く、透けるように白い喉にも、半月状に生えた触手がまるで首輪のように巻きついていた。

自由になるのは指と視線ぐらいのもので、わずかな身じろぎもままならない。

凛然と静寂を保つ華道部員たちの間で、独り、無様に置かれた茜の姿はいっそ滑稽だった。



目を覚ましてから数分。
ただ座っている部員たちに不気味なものを感じながらも、茜はどうにか落ち着きを取り戻しつつあった。
冷静になって、まず気がついたのは、やはり色責めの類を受けることは免れないということ。
そして、責め手たちの偏執的な好色さである。

御堂茜の象徴たる、一つに束ねていた髪は解かれて、丁寧に櫛をかけられていた。
さらに、畳の上にざっと放射状に流れた自分の髪から、茜の知らない匂いがする。

茜はただ着替えさせられただけでなく、ご丁寧に体を清められたのだ。
意識を失っているうちに、すべてを見られたのかと思うと、堪らない羞恥がこみ上げてくる。

着せられた襦袢は、恥ずかしさと悔しさで紅潮した肌よりも、もう少しだけ赤い、極薄の一品だった。

濡れているわけでもないのに、透けている。隠すためではなく、見せるための衣装。
こんなものを着て往来を歩けるはずもなく、繊細な生地は下着としての用を足すとも思えない。

閨を盛り上げるための淫らな飾り着、情交を盛り上げるための浅ましい調味料であった。

そんな閨装束の裾はめくれ返り、腰帯は緩み、胸元は乱れて、すでに着崩れている。
茜は動いていない。動けない。初めから、そういう風に着せられていたのだ。
豊かな乳房は半分近くも合わせからこぼれて、頂までもが今にも肌蹴出ててしまいそうである。
腰帯から下のめくれ返った布地もまた、その薄紅色の透かしでもって、少女の白い肌と見事な対比を競っていた。

そんなところまで、全て計算づくのことなのだろう。

目に痛いほど真っ赤な、股座に痛いほど食い込まされた褌もまた、然りである。
これからたっぷり貪ろうという茜の肢体を、これでもかと囃し立てていた。

いわば『仕込み』にこの入れ込みようである。
そんな連中が『本番』にどんな手管を用意しているか。

考えたくも無かった。



(負けない! どんなに酷いことされても、私は負けない……!)

自分で自分を追い込んでしまわないように、固く目を閉じ、ただそれだけを強く想うことにする。

(葵ちゃんと梓ちゃんが絶対助けに来てくれるはずだもの!)

心強い親友たちの姿を思い浮かべ、自らを勇気づける。
覚悟を決めて目を開けようとした、そのとき、

逆さまにされた背中の後で、淑やかな衣擦れの音。

心の準備を終える直前、最悪のタイミングで虚を突かれ、茜の背筋を冷たいものが駆け抜ける。
いとも容易く心を乱された茜に、己の未熟さを歯噛みする暇も与えず、

「それではただ今より、本日のお稽古を始めます。皆さん、よろしくお願いします」

日本人形のように鎮座していた華道部部長が、静かに性宴の始まりを宣言した。

神妙な声で、お願いしますと返す部員たち。
礼儀正しく、整然としたやりとり。

その裏に潜む底知れぬ悪意を、囚われの少女退魔師は鋭敏に感じとってしまう。
情けなく早鐘を打ち始めた心臓に、茜は、早くも自らの弱気を悟らされた。

「本日は、女性の体ににお花を生けるお稽古をします」

「……っ?」

「器となって頂くのは、本日仮入部された御堂茜さんです。御堂さん、よろしくお願いしますね」

大和撫子は穏やかな笑みを浮かべてそう言うと、
茜の背に膝頭が当たりそうなほど近づき、居住まいを正した。
そして、その白魚のように細く、たおやかな指で、茜の双臀にそっと触れてくる。

言葉の意味は計りかねたが、尻肌にに生じた冷たい感触に、要は「犯す」と言われたのだろうと割り切る。

「ん、くぅ……!」

(ふ、ふんっ! どんなに酷いことされたって、絶対負けないんだから!)

「とても綺麗なお肌……。羨ましいですわ。なめらかで、手に吸いついてくるよう」

うっとりと呟きながら、赤褌に割られた左右の尻を、ゆっくりと撫で回してくる。
触れるか触れないかという絶妙な力加減で、優しく、優しく。
何度かそうされるうちに、尻肌に芽生えるこそばゆい感覚。

「さて。女性の体にお花を生けるには……。
 まず、器となる女性の体をよくほぐして差し上げることが肝要です。
 慌てず、時間をかけて。丁寧に、少しずつ少しずつ、気持ちよくして差し上げるのです」

少し大きめに張った声で、部員たちに手順の説明を始める大和撫子。

(えーっと……焦らし、責め、ってこと? ちょっとまずい、かも……)

淫乱と言われても否定できない感じやすい体を持つ茜にとって、それは、泣き所だった。

「ああ、それにしても本当に素晴らしいお尻をされていますのね。
 形も色も、手触りも。それに、肉付きまでこんなに豊かで……。
 殿方にはさぞ堪らないものでしょう。女の私でも眩暈がするほどですもの」

真っ直ぐな賞賛を受けて、茜はこんな状況にも関わらず、不覚にも嬉しくなり、照れを覚えた。
年頃の少女にとって、美しい同性からうっとりとした声で褒められるというのは、強烈に喜びを覚える出来事だった。
敵の首魁である女性に対して、構えていた全身の緊張を緩めてしまう。
反抗心を呼び起こし難いという点で、それはなんとも厄介な言葉責めだった。

「んっ、ん、ふぅ、んんっ……」

わずかに守りを崩された茜に、攻める大和撫子はその手つきを徐々に強めていく。
自らの言葉通り、少しずつ、少しずつ。

やがて、薄紙を挟んだような愛撫から、徐々にしっかりと肌に触れる愛撫へと移行していく。
若い女尻の弾力を確かめるように、極上の肉付きに指を埋めるようにして、茜の性感を刺激してくる。

(や、やだ……これ、こんな、ちょっと……まずい、まずいってば!)

それでもなお繊細な、もどかしい愛撫。
尻肌の性感は焦れったい心地よさに耐えかねて、早くも持ち主を裏切ろうとしていた。

少し冷たいその手が触れるたび、臀丘は、甘い熱を帯びる。
撫でる掌の方もまた、甘美に高まる尻肉の熱に温められて、両者は次第に溶け合っていく。

「ふぅっ、んんっ、ふっ、ふぅぅ……! んん、んっ、ふっふっ……んんんっっ」

茜の呼吸は、明らかに乱れ始めていた。

ここに来て、窮屈な猿轡に感謝せねばならなかった。
行儀良く居並んだままの部員たちに、みっともなく乱れた声を聞かれずに済んでいるのだから。

(負け、ない……負け、ないぃ! 葵ちゃん、梓ちゃん……私、負けないから……頑張るからね!)

やはり茜を支えているのは、大好きな親友たちの面影だった。
若輩といえども、貴き使命を帯びた退魔師として、この程度の責めに屈するわけにはいかない。

健気に耐える少女退魔師。
しかし、責める大和撫子は狡猾で、そして無慈悲だった。

「んんーーっっ!??」

いきなり、愛撫の質が変わった。
ぐっと力を込め、粘土でも捏ねるかのような乱暴さで、尻肉を揉みこんでくる。
それまでの優しく繊細な愛撫とは正反対の、力任せで乱暴な愛撫。

「んっ、んんっ!? んふっ、んっ、んんーっ!」

完全に虚を突かれ、思わず零れた嬌声が猿轡に染み込む。
さらに、大和撫子は茜の背に触れるほど膝頭を寄せて、茜の顔を覗き込んできた。
意識を取り戻してから初めて、お互いの顔を見つめ合う二人の美少女。

「うふふ……」

自らの尻山越しに見える日本人形のような美貌には、やはりどこまでも優しく穏やかで、柔和な微笑が張り付いている。
しかし、その笑顔からはもう、底知れぬ悪意と陰湿さ、そして恐怖しか感じられない。

逆に、自分は今どんな顔をしているのか。
この女性の瞳に、赤褌に彩られた股座越しに映る自分は、どんな顔をしているのかと思い至り、
沸きあがる恥ずかしさと悔しさ、そして情けなさに、茜は咥えさせられた手拭いを噛み締めていた。

弱々しく目尻の落ちた瞳は潤み、頬は桃色に上気して、鼻からは甘く濡れた息を漏らす。
恥ずかしい姿勢、恥ずかしい服装で、恥ずかしいところを晒して、いいように弄ばれて。
退魔師が、退治に来た妖魔に操られた人間の手で。

無様だった。滑稽だった。
なんてみっともなく、情けない自分であるか。
悔しかった。悔しくて、恥ずかしくて、堪らなかった。
桃色の霞に閉ざされようとしていた思考が、込み上げる自分への怒りで白熱する。

それなのに――

「んんんん……っ!! ふぅぅ、んっふぅぅ! ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、んふぅ!」

気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい!

茜を見下ろす大和撫子はその細腕に力を込めて、
甘く火照った肌の下、たっぷり詰まった尻肉を揺さぶるように撫で回してきた。
こそばゆい快感で餌付けした尻肌に、待ち望んでいた強い刺激をくれてやる。

緩急を心得た色責めに、たっぷりと焦らされた茜の双臀は、一溜まりもなく寝返っていた。

「……どう、ですか? ふふ、聞くまでも、ないっ、ようですね……っ」

一方的に責め立てている大和撫子の方も、呼吸にいくらかの乱れが生じていた。
なにしろ、箸より重いものを持ったことがないとしても、何の不思議もないような華奢な女性である。
だが、吐息の乱れは力の入った愛撫による疲れのためだけではない。

彼女もまた、興奮しているのだ。

愛撫されることで、持ち主だけではなく、愛撫する側にも深い官能を与えてくる。
茜の尻は、まぎれもなく極上の一品だった。

自然、愛撫はますます激しさを増し、囚われの美少女退魔師をいよいよ激しく攻め立て、追い込んでいく。

絹織物の手触りを確かめるように優しかった手つきは、今や粘土でも捏ね回すように力強い。
尻山の絶景を縦横無尽に駆けめぐり、快楽の炎を点けて回る。
また、時折立ち止まってはその上質な肉の味わいを確かめるように揉みしだく。

「んふっ、んふっ、ふぅぅ……! ふっ、ふぅ、んんっ、ふむっ、んふぅぅぅぅ……っっ!!」

(ダメ! だめ、だめ、だめぇ……! 負けちゃ、ああ、でも、気持ち、いいよぉ……)

臀丘に山火事のように燃え広がった快楽は、ついに飛び火して、茜の理性までもを焼き落としにかかる。
もちろんそんな茜の窮状などお見通しの華道部部長は、征服の魔手をさらに拡げていく。
完全に攻め落とした双子山を下り、まんぐり返しに固められて天井を仰ぐ裏腿へと至る。

「ふっ、ふぅ、んふぅぅ……! んん、ふぅ、ふぅ……ん、んんっっっ!?」

敏感な内側でも、触りやすい外側でもなく、裏側。すぐ上には、魅惑の美尻が実っているのだ。
それゆえ、度重なる陵辱を受けてきた茜にとっても、余り責められた覚えの無い場所だった。

膝近くまで一息に、裏腿の肌を駆け下りていく小さな両掌。

「んっ……んん、ふっ、ふぅ……」

幸い裏腿の感度は危惧したほどではなく、茜の体の中では非常に鈍い部類だった。
元々、大腿二等筋という人体の中でも特に大きな筋肉がある部位である。

厳しい訓練で引き締まった筋肉を、薄い脂肪と柔肌が覆っている。
開発されたわけでもないその場所は、あまり快楽神経が通っていない。
気持ちいいといえば気持ちいい。
だがそれは性的なものではなく、按摩の心地良さに類するものだ。

この隙に、尻の疼きがおさまってくれれば……。
快楽に溶けかかった茜の思考に、そんな楽観的な目論見が浮かぶ。
もちろん、老獪な大和撫子がそんな愚を犯すはずも無い。

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……んんっ、ふむぅ……! ……ふっ、ふっ、ふー……んふぅ!」

いかにも日本人らしい切れ長の一重。
妖しく光るその瞳は、玩弄に茹だった茜の心をいとも容易く見透かしていた。

腿裏を撫で下ろした掌は、すぐに双臀へととって返す。
揉まれ、撫でられ、捏ねまわされて、尻肉を焼き焦がす快美感が一層激しく燃え上がった。
その心地よさに、明瞭さを取り戻しかけた脳髄はあっさりとふやけ、ついには女悦の根源たる子宮までもが疼き始める。

そして、なす術無く法悦にたゆたう茜の表情を見切り、時おり攻め手を裏腿へと向ける。
情欲に侵された少女の体にお預けを喰らわせつつ、裏腿への鈍い刺激で持ち直すことを許さない。
たっぷりと飢えさせたところに、また餌――淫蕩な悦び――を与えてやる。

延々と、その繰り返し。

すべすべと滑らかな裏腿、むちむちと張り詰めた双臀を行きつ戻りつ、
再び焦らし責めの要素を加えた狡猾な愛撫で、慰み者の少女から退魔師の装いを剥ぎ落としていく。



逆さまにされ、捲れかえった襦袢の裾は、薄紅色の花びらを連想させる。
その花から生えたような少女の真白い下半身は、萎れた一対の雌しべにも見えた。
ならば桃のような美臀を愛しげに撫でさする少女は、さながら花を啄ばむ蝶のよう。

啄ばまれるがままその華を蜜に濡らして、親友たちの面影さえ見失った茜は、心地良い玩弄に身を任せようとしていた。

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