ひさがれひさぐは夜の花


 ゴメスからリアを買受けた奴隷商人は、彼女の売却先としてとある幼女趣味の金持ちをあてこんでいた。

 しかし、彼はリアが処女でないことに難色を示し、商談は決裂。
 その結果、リアが売り払われた先は、とある娼館であった。

 そこに揃えられた娼婦は皆、リアと同じような年頃の、幼い少女ばかり。
 つまりは、『そういう趣味』の貴族や富豪を客層とする高級娼館だった。

 リアとて、並の少女ではない。
 ありふれた安宿であったなら、容易く逃げ出してみせただろう。

 だからこの巡り合わせは、不運というしかない。
 厳重な拘束の上、筋力が激減する薬を切れ目なく投与されては、さすがのアサシン少女にも打つ手はなかった。

「今夜は、リアに会いに来て下さり、ありがとう、ございます……お父様」

 奇妙な口上は、この娼館特有の趣向である。まず、客となった男は、少女から自身への呼称を指定する。
 そして躾の行き届いた幼い花売りは、それに合わせた役柄を演じるのだ。

「リアのために、お時間を割いて下さるなんて。嬉しいです、お父様……」

 まさに、花のほころぶような微笑を浮かべ、歓迎の言葉を述べるリア。
 まだ多少のぎこちなさは残るものの、客を取らされ始めて早二週間。
 リアは次第に、この行為にも慣れつつあった。

「ほおぅ……! 噂には聞いていたが、まさかこれほどとは……」

 バスローブを羽織り、ベッドに腰掛けていた中年男が、感嘆の声を漏らす。
 リアの評判は、上々であった。噂を聞き、期待を膨らませて来た男をしてこの反応である。
 それも当然といえた。

「よしよし、こっちに来なさい」

 興奮を隠そうともせず、男は性急にリアを呼びつけた。
 行為に及ぶ前に、少女と純粋な意味で遊んだり、お茶を飲むことが、ここでの一種の嗜みであり、作法である。
 だが、そんな段取りなど忘れてしまうほどに、男が今宵、その一夜を買い受けた少女は魅力的であった。

「……はい」

 あからさまな劣情を向けられ、必死に抑え込んでいた恐怖心がぶり返す。

 忌まわしい初体験の記憶は、リアの心身に深い爪痕を刻みつけていた。
 男が、自身に向けられる雄の情欲が、どうしようもなく恐いのである。

 だが、客である男の不況を買えば、もっと恐ろしい仕置きを受けることも、リアは思い知らされていた。
 へたりこみそうになる自分を叱咤し、崖から身を投げるような思いでリアは男の正面へと進み出る。

「え、と……ええっ、と……」

 下卑た喜色を滲ませて、男はリアの全身を嘗め回すように見つめてくる。
 儚いほどに華奢な、少女の未成熟な肢体は、淫靡な衣装で背徳的に飾られていた。

 ストッキングに、ガーターベルト。
 折れそうなほどに細い足がショーツに通されたのは、それらを身につけた後。
 背伸びが過ぎるようで奇妙に似合ったその意匠は、危うい魔力を帯びていた。

 極めつけは、ベビードールである。
 カップ部分の布地が無く、淡い膨らみと桃色の粒果を丸出しに晒すばかりか、菱形に縁取って強調さえしているのだ。
 それらの衣装は全て黒で揃えられ、雪白の肌を鮮やかに引き立てている。

「あっ、あの、えっと……ご、ご奉仕いたしますねっ、お父様」

 視線で犯されるおぞましさに耐えかね、リアは自分から切り出していた。
 逃れられない務めならば、せめて少しでも早く終わらせようと思ったのだ。

「……いや。それはいいから、ここに座りなさい」

 言って、男は自分の膝を指し示す。

「は、はい……失礼します、お父様」

 言われるがまま、淑やかに背を向け男の膝に腰掛けていく。
 後ろを向いた瞬間、男が息を呑むのがわかった。

 背中に、ベビードールの布地はない。
 脇の下と括れのない腰の上を、二本の留め紐が走るだけ。
 ショーツも同様に、布といえるような幅はなく、肉付きの薄いヒップを少しも隠していない。

 すでに芯まで諦観に蝕まれていても、リアはなお強い羞恥を覚えてしまう。

 幼い娼婦の後姿は全裸も同然であるばかりか、留め紐の蝶々結びや
 谷間に食い込んだショーツのストリングスによって、破廉恥極まりなく仕立て上げられていた。

 男の目を、楽しませるために着飾る――その行為に、リアは嫌というほど自らの現在地を思い知らされる。

「あっ!? っ……あっ、あぁ……」

 腰掛けた途端に、男はリアの身体をまさぐり始めた。

 肥えた芋虫のような指が、新雪の肌を這い回る。
 慎ましやかな胸地をなぞり、桃色の粒果を啄ばむ。
 下腹部をすべり降り、卑猥な三角布の中へと潜り込んでいく。

「あぁ、あんっ、あっ、ふぁ……!」

 興奮に酔った男の愛撫は、いささか乱暴で、お世辞にも上手くはなかった。
 それでもリアはたちまちのうちに感じ入り、甘い嬌声を堪えきれなくなる。

 未だ正気を残す心に反して、リアの体は、すっかりと躾られていた。

 この館に買われてから、『水揚げ』されるまでの、一ヶ月間の調教。
 それはまず、快楽の悦びを徹底的に覚えさせられることから始まった。

「イクっ、イキます、お父様……!」

 耳周りやうなじに、分厚い唇で粘着質なキスを落されながら、左の乳首と淫核を同時に摘まれ、リアは達した。

 練達の調教師によって突き落された飽くなき絶頂地獄。
 ようやく赦された時には、リアの肌という肌、肉という肉は、淫惨な性感帯と成り果てていた。

「可愛かったよ、リア。次は、一緒に気持ちよくなろうか」

 ベッドに上がり、シックスナインの体勢になる。

「おおっ、上手じゃないかっ」

 もはや快楽神経の塊にも等しい肉華を、ぬめる舌腹でこそがれて、リアの意識は法悦の境界線を行き来していた。
 それなのに、小さな唇は男の肉棒を懸命に咥え込み、白魚のような手指は含みきれなかった茎部を撫でしごく。

「あむっ、ちゅ、んぷ、ちゅぱ……」

 幼い肢体を淫らに作り変えられた後、リアは娼婦としての教育を施された。

 ちらつかされる快楽というご褒美。
 絶えず飢え火照る体を引き摺り、抗う術などあるはずもなく、リアは犬よりも従順に、春をひさぐ女へと躾られていった。
 今では、反射の域で男への奉仕を行えるほどである。

「おおっ、射精るぞ、リア……またっ、膣内に、膣内に射精すぞっ、リア!」
「はいっ、ください、お父様ぁ……」

 この夜、特殊な精力剤を飲んでいた男は、あらゆる体位でリアを楽しみ、何十発という精を放った。
 小さな体で、その全てを受け止めたリアは、ようやく休息を与えられる。
 すでに、太陽は天頂近く。
 わずかな眠りのあと、リアはまたすぐに身嗜みを整え、新たな男と一夜の恋に堕ちねばならないのだった。





 さて。

 例の『筋力を激減させる』薬であるが――実は、その症状は副作用でしかない。
 本来の効用は、『老化を止めること』なのである。

 ちなみに、副作用にはもう一つあって――それは、『著しく寿命が縮むこと』。

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